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「35cmのセイゴが釣れた」「いや、それはもうフッコでしょう」。釣り場やSNSで、こんなやり取りを見たことはありませんか。シーバスはサイズによって呼び名が変わる出世魚です。ところが、どこからがセイゴでどこからがフッコなのか、はっきり答えられる人は意外と多くありません。
答えにくいのには理由があります。呼び名の境界は全国で統一されておらず、県の資料どうしでも数字が少しずつ違うからです。さらに関西では「ハネ」、愛知では「マダカ」と、名前そのものが変わる地域もあります。
この記事では、呼び名とサイズの目安、地域による違い、年齢との関係、そして正しい測り方を、県や研究機関の資料をもとに図解で整理します。サイズの意味が分かると、目の前の1匹が「何年生きてきた魚なのか」まで見えてきます。釣った魚の見え方が、少し変わるはずです。
シーバスという魚そのものの生態や、なぜ川や港に入ってくるのかは、シーバスとは?生態・呼び名・魅力の完全ガイドで解説しています。この記事は、その中の「呼び名」の章を深掘りした続編です。
結論|呼び名とサイズの目安はこの表で覚える
先に全体像を示します。複数の公的資料に共通する区切りは「30cm」と「60cm」です。国土交通省九州地方整備局の魚類解説も、京都府の丹後の海の生き物紹介も、おおむねこの2つの数字で呼び名を分けています。
| 呼び名 | サイズの目安(全長) | 年齢の目安 | 補足 |
|---|---|---|---|
| コッパ・セッパなど | 10cm前後まで | 0歳 | 地域によって呼び方が違う。使わない地域も多い |
| セイゴ | 30cm前後まで | 1歳前後 | 40cm程度までをセイゴとする資料もある |
| フッコ/ハネ | 30〜60cm前後 | 2〜3歳前後 | 関西ではハネ、愛知ではマダカ(マタカ) |
| スズキ | 60cm前後以上 | 4歳以上 | 最大で全長1m近くになる |
| (ランカー) | 80cm以上 | 10歳以上が目安 | 釣り人の間の呼び方。公的な定義ではない |
年齢の列は、愛知県水産課の「1歳魚がセイゴ、2〜3歳がフッコ、4歳以上がスズキ」という説明に沿っています。ランカーの「10歳以上」は、Honda釣り倶楽部の解説で示されている目安です。どれも「だいたいこのくらい」という幅のある数字だと考えてください。
出世魚とは|なぜ成長すると名前が変わるのか
出世魚(しゅっせうお)とは、成長に合わせて呼び名が変わる魚のことです。ブリ(ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ)が有名ですが、スズキもその代表格として知られています。
名前が変わる理由については諸説ありますが、釣り人として押さえておきたいのは「サイズによって暮らし方がはっきり違う」という事実です。三重県水産研究所の資源評価によると、スズキの稚魚は湾内の藻場・干潟や河口域で育ち、動物プランクトンから小さなエビ・カニ、そして小魚へと食べる物を変えていきます。成長とともに魚食性(小魚を食べる性質)が強まり、伊勢湾ではスズキの成魚を食べる魚はほとんどいない、食物連鎖の頂点に立つ魚だとされています。
つまり、小さなセイゴと大きなスズキは、同じ魚でも「いる場所」「食べている物」「動く時期」が違います。漁師や魚屋さんにとっては、獲れる場所も値段も別物だったわけです。呼び名を分けたくなるのは自然なことだと言えます。
釣りでも同じです。狙うサイズが変われば、行く場所も、投げるルアーも、通う季節も変わります。呼び名は単なる雑学ではなく、「今日はどのサイズを狙うのか」を決める作戦の言葉でもあるのです。
地域で違う呼び名|フッコ・ハネ・マダカ
呼び名がいちばんややこしくなるのが、中間サイズです。小さいセイゴと大きいスズキはほぼ全国共通ですが、その間の30〜60cmクラスは地域によって名前が変わります。
- フッコ:関東を中心に広く使われる呼び名。釣り雑誌やメーカーの記事でも標準的に使われます
- ハネ:関西で一般的な呼び名。京都府の資料でも「ハネまたはフッコ」と併記されています。関西のエビ撒き釣りを「ハネ釣り」と呼ぶのもこの名前から来ています
- マダカ(マタカ):愛知県の呼び名。愛知県水産課は、2〜3歳のスズキを県内では「フッコ」とは呼ばず「マタカ(マダカ)」と呼ぶと紹介しています
このほか、セイゴより小さい個体を「コッパ」「セッパ」と呼ぶなど、さらに細かく分ける地域もあります。逆に、サイズに関係なく「スズキ」とひとまとめにする人も少なくありません。
旅先の釣具店で「ハネが上がってるよ」と言われたら、それは中型のシーバスのことです。地域の言葉で話してもらえると、それだけで現地の情報が入りやすくなります。呼び名を知っておくのは、遠征先での小さな武器にもなります。
ちなみに、このブログの管理人は成長の呼び名を「セイゴ→フッコ→スズキ」で覚えていて、ふだんはサイズに関係なく「シーバス」と呼んでいます。
瀬戸内エリアの釣り場については、香川・瀬戸内のシーバスポイント10選でまとめています。
サイズと年齢|60cmまで約5年、80cmは10年以上
呼び名の次は、年齢との関係です。ここを知ると、1匹のシーバスの重みががらりと変わります。
三重県水産研究所の資源評価には、東京湾や伊勢・三河湾を中心とする内湾域のスズキの成長が載っています(東海区水産研究所、1989年の成長式)。満年齢ごとの標準体長は次のとおりです。
| 満年齢 | 1歳 | 2歳 | 3歳 | 4歳 | 5歳 | 6歳 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 標準体長 | 18.5cm | 26.7cm | 34.0cm | 40.4cm | 46.1cm | 51.2cm |
一方、Honda釣り倶楽部の解説では、東京湾のデータとして生後1年で20〜25cm、2年で30〜35cm、3年で40〜45cm、60cmに達するまで約5年と紹介されています。播磨灘や房総のデータとして「1歳20cm、2歳30cm、3歳40cm」という数字も挙げられています。
2つの資料で数字が少しずれているのは、測っている長さと海域が違うためだと考えられます。上の表は尾びれを含まない「標準体長」で、釣り人が普段言う全長より短く出ます。どちらにしても、伸び方の傾向ははっきりしています。最初の数年は1年に7〜10cmほど伸び、その後は年々ペースが落ちていくのです。
この曲線から分かるのは、大きな魚ほど1cmを伸ばすのに時間がかかるということです。Honda釣り倶楽部の解説は、80cmを超えるには少なくとも10年かかることはほぼ確実だとしています。ただし大型個体は採集数が少なく年齢を確かめにくい、という限界も同じ解説で触れられています。
70cmのシーバスを手にしたら、それは港や川で何年も生き残ってきた魚です。そう思うと、写真を撮ってすぐ水に返したくなる人も多いのではないでしょうか。釣り人の間でリリースが大切にされている理由の一つは、ここにあります。
「何cm」の測り方|全長・尾叉長・標準体長の違い
サイズの話で混乱しやすいのが、「どこからどこまでを測った長さなのか」です。魚の長さには主に3種類の測り方があり、国連食糧農業機関(FAO)の水産学マニュアルでは次のように定義されています。
- 全長:口先から、尾びれのいちばん長い部分の先端まで
- 尾叉長(びさちょう):口先から、尾びれの切れ込みの中央まで
- 標準体長:口先から、尾びれの付け根(背骨の末端)まで。尾びれを含まない
釣果報告やSNSで言う「◯cm」は、ほとんどが全長です。一方、水産研究の資料では標準体長や尾叉長が使われることがよくあります。FAOのマニュアルも、どの長さを使ったかを必ず明記することを求めています。前の章の成長表を見て「自分の釣った40cmは4歳だ」と早合点しないでください。全長40cmなら、標準体長ではもう少し短くなるはずです。
呼び名の目安(セイゴ30cmなど)は、一般に全長で語られることが多い数字です。この記事の表でも全長として扱っています。
ランカーとは|80cmが特別扱いされる理由
シーバス釣りをしていると必ず耳にするのが「ランカー」という言葉です。BE-PALの解説では、シーバスのランカーサイズは80cmからとされています。Honda釣り倶楽部の解説でも「ランカー(80cm以上)」と紹介されています。
ただし、これは釣り人の間で定着した目安であって、公的な定義ではありません。呼び名のセイゴ・フッコ・スズキは漁業や市場でも使われる言葉ですが、ランカーは純粋に釣りの文化から生まれた言葉です。
80cmが特別なのは、単純に数が少ないからです。前の章で見たとおり、大きくなるほど成長はゆっくりになります。80cmに届くまでには10年以上かかるとされ、その間に生き残る魚はごくわずかです。BE-PALの記事でも、79cmで止まる魚が多いと書かれています。あと1cmが遠い。この「80の壁」が、多くのアングラーを夜の水辺へ通わせているのです。
釣り人どうしの会話では、ほかにもサイズの言い方があります。
- ◯◯アップ:「60アップ」なら60cm以上のこと。「70アップ」「80アップ」も同じ使い方です
- ◯◯クラス:「50cmクラス」なら50cm前後のこと。きっちり測っていないときにも使います
- メーター:全長100cm級のこと。シーバスではめったに出ない、夢のサイズです
このブログの管理人の自己最大は、大雨の日の淡路島で釣った80cmのランカーシーバスです。線状降水帯で海へ注ぐ小さな川が氾濫し、海に大きな流れ込みができていました。そこへアイマの「サスケ120裂波」を通して、ヒットした1匹です。
アイマ サスケ120裂波(80cmを釣ったルアー)
ただし、大雨の最中や直後の水辺はとても危険です。増水した川沿いや河口には近づかず、警報や避難情報が出ているときは釣りに行かないでください。流れ込みを狙うのは、雨が上がり、足元と退路の安全を確かめられるようになってからにしましょう。
サイズで変わる居場所と季節|狙い方の作戦を立てる
ここからが釣りに直結する話です。冒頭で「サイズによって暮らし方が違う」と書きました。では具体的に、どのサイズがいつ、どこにいるのでしょうか。
三重県水産研究所の資源評価(伊勢湾周辺)では、季節ごとの動きが次のようにまとめられています。
- 稚魚:2〜5月ごろに現れ、湾内の藻場・干潟や河口域で生活する。11月ごろ、越冬のため湾奥から外海側へ移動する
- 未成魚と成魚:成魚は産卵後の春に湾内へ入り、未成魚とともに湾奥の汽水域などで餌を食べて過ごす。11月ごろから越冬・産卵のため外海側へ下り始める
- 産卵:伊勢湾周辺では12〜2月の冬。盛期は12〜1月で、湾口から外海の沿岸で産卵する
東京湾でも、千葉県の資源評価で産卵期は10月下旬〜3月上旬、産卵場は湾口部とされています。また成熟する年齢は、雄が満3年、雌が満4年とされています(三重県資料)。おおむね40cmを超えたあたりから、冬に産卵のため湾の外へ出る魚が増えていくと考えると、季節の動きがイメージしやすくなります。
この動きを釣りに置き換えると、狙い方の作戦が見えてきます。
- 数を釣りたい・最初の1匹がほしい:セイゴ〜フッコが湾奥や河口に多い時期・場所を選ぶ。港の常夜灯まわりは、小型が群れやすい代表的なポイントです
- 大型を狙いたい:春〜秋に餌を食べ込む時期、とくに冬の産卵に向けて体力を蓄える秋が勝負どころ。大型の餌になる大きめのベイト(餌となる小魚)が入っている場所を探します
- 冬の湾奥:大型が外海側へ移るため、湾奥ではサイズが出にくくなりがち。反対に湾口側や外洋に面した場所に目が向きます
常夜灯まわりの攻め方は常夜灯攻略|明暗の境目という一級ポイントで、河川の流れの読み方は河川のシーバス攻略|流れとストラクチャーの読み方で詳しく解説しています。どちらのサイズを狙う日でも、潮が動くタイミングに合わせるのが基本です。潮の選び方はシーバスの潮の読み方を参考にしてください。
季節によって大きな個体がどこに動くかは、シーバスの年間シーズナルパターン総まとめ|春夏秋冬の居場所・餌・狙い方で解説しています。
サイズ別のタックルと取り込み|大きい魚ほど準備がいる
狙うサイズが決まると、必要な道具も変わります。特に気をつけたいのは、ルアーを食わせた後の「取り込み」です。
| サイズ | タックルの考え方 | 取り込み |
|---|---|---|
| セイゴ(〜30cm前後) | 標準の1セットで十分。小さめのルアーが効く場面もある | 足場が低ければ抜き上げも可能。暴れるので手早く |
| フッコ/ハネ(30〜60cm前後) | 標準の1セットの守備範囲の中心 | 足場が高い場所や50cmを超えそうならネットを使う |
| スズキ(60cm前後〜) | リーダーの擦れ対策、ドラグ調整が重要になる | ランディングネット(タモ網)が基本。抜き上げは避ける |
大型を無理に抜き上げると、ラインが切れたり、魚が護岸に当たって傷ついたりします。高さのある堤防なら、柄の長いランディングネットがあると安心です。最初の1セットの選び方はシーバス釣りの始め方|最初に揃える道具と予算でまとめています。
魚をつかむときも注意が必要です。シーバスはえらぶたの縁が鋭く、素手で触ると手を切ることがあります。フィッシュグリップ(魚の口をはさむ道具)を使い、魚は濡れた手かタオル越しに支えるようにしましょう。
正しいサイズの測り方|魚にも記録にもやさしく
せっかくの1匹、サイズは正確に残したいものです。FAOのマニュアルが示す測定の基本は、釣り場でもそのまま使えます。
- 口を閉じる:口が開いていると数cm長く出ることがある
- 体と尾をまっすぐ伸ばす:曲がったまま測ると短く出る。全長なら尾びれを自然に伸ばした先端まで
- 濡れたまま、手早く測る:魚は乾くと縮み、何より弱る。メジャーシートを先に濡らしておくと魚体を傷めにくい
熱い護岸や乾いた砂の上に魚を置くのは避けましょう。リリースするなら、測る・撮るは手早く済ませるのがマナーです。持ち帰る場合は、都道府県の規則や釣り場のルールで持ち帰りに条件がないか、事前に確認してください。釣り場の立入可否や規則は変わることがあるため、現地の最新情報を確認してから出かけましょう。
シーバスのサイズと呼び名|よくある質問
Q1. セイゴ・フッコ・スズキは別の魚ですか?
同じ魚です。標準和名はすべて「スズキ」で、成長の段階によって呼び分けているだけです。ルアー釣りの世界では、サイズを問わず「シーバス」と呼ぶのが一般的です。
Q2. 35cmはセイゴですか、フッコですか?
どちらとも言えます。セイゴを30cm以下とする資料もあれば、40cm程度までとする資料もあるからです。30〜40cmは呼び名が揺れるサイズだと覚えておき、地元の呼び方に合わせるのがいちばん角が立ちません。
Q3. ハネとフッコは何が違うのですか?
指しているサイズはほぼ同じで、違うのは地域です。関西ではハネ、関東などではフッコと呼ぶことが多く、京都府の資料では両方が併記されています。愛知県ではこのサイズをマダカ(マタカ)と呼びます。
Q4. ヒラスズキにも同じ呼び名を使いますか?
ヒラスズキはスズキとは別の種類です。釣り人の間では大きさに関係なく「ヒラ」「ヒラスズキ」と呼ぶのが一般的で、セイゴ・フッコの呼び分けは主にスズキ(マルスズキ)に使われます。三重県の資料でも、ヒラスズキやタイリクスズキは市場でスズキと明確に区別されていると書かれています。
ヒラスズキ・タイリクスズキとの見分け方は、マルスズキ・ヒラスズキ・タイリクスズキの違い|見分け方と住む場所で詳しく解説しています。
Q5. シーバスは何年くらい生きるのですか?
正確な寿命ははっきりしていません。80cmを超える個体は10歳以上と考えられていますが、大型の魚は調査で採れる数が少なく、年齢を確かめにくいとされています。少なくとも、ランカーサイズは10年以上生き抜いてきた魚だと言えます。
Q6. 釣り大会や記録では、どの長さで測りますか?
大会ごとにルールが決められているので、必ず事前に要項を確認してください。釣り人どうしの会話やSNSの「◯cm」は全長が一般的です。研究資料の数字と比べるときは、標準体長や尾叉長で書かれていないかを確認しましょう。
まとめ|サイズと呼び名で覚えておく3か条
- 区切りは30cmと60cm:〜30cm前後がセイゴ、30〜60cm前後がフッコ(関西はハネ、愛知はマダカ)、60cm前後からスズキ。30〜40cmは地域で揺れる
- サイズは年齢を語る:60cmまで約5年、80cmのランカーは10年以上が目安。研究資料の数字は標準体長のことがあるので物差しをそろえて読む
- サイズで作戦が変わる:数を狙うなら湾奥・河口・常夜灯、大型を狙うなら秋。測るときは口を閉じ、まっすぐ伸ばし、濡れたまま手早く
次に釣れた1匹は、ぜひメジャーを当ててみてください。30cmのセイゴなら、まだ1〜2年の若い魚。60cmを超えていれば、何度も冬を越してきた魚です。その数字の重みが分かったとき、シーバス釣りはもう一段おもしろくなります。いつか手にする80cmに向けて、今夜も水辺へ出かけてみませんか。
参考にした情報源
- 三重県水産研究所「2020年度三重県におけるスズキの資源評価」(PDF)
- 千葉県「沿岸重要水産資源 令和6年度資源評価 スズキ(東京湾)」(PDF)
- 愛知県「スズキ ~あいちの四季の魚・秋~」
- 京都府「丹後の海の生き物(スズキ)」
- 国土交通省 九州地方整備局「肝属川の魚類 スズキ」
- FAO「Manual of Fisheries Science Part 2 — The Measurement of Fish and Shellfish」
- Honda釣り倶楽部「ランカーシーバスは果たして何歳?魚の大きさと年齢の関係」
- BE-PAL「釣り人憧れのランカーサイズとは?『大物』の基準を釣りライターが解説するぞ!」

