マルスズキ・ヒラスズキ・タイリクスズキの違い|見分け方と住む場所

夕日の磯と白波、岩礁帯を泳ぐシーバスのイメージ(生成画像) 初心者ガイド

※本記事にはプロモーションが含まれます。

「それ、ヒラじゃない?」「いや、マルでしょう」。磯や河口で大きなシーバスが上がると、こんな会話が始まることがあります。日本の海にいるスズキの仲間は、実は3種類です。釣り人が「マルスズキ」と呼ぶスズキ、磯の主役のヒラスズキ、そして外国から入ってきたタイリクスズキです。

3種は見た目がよく似ています。慣れた釣り人でも、写真1枚では迷うことがあるほどです。けれど、体のどこを見ればよいかを知っていれば、多くの場合は釣り場で見当をつけられます。

この記事では、3種の違いを「見分け方」「住む場所」「体のつくり」「外来種の問題」の4つの面から、研究機関や自治体の資料をもとに図解で整理します。違いが分かると、なぜヒラスズキは荒れた磯にいて、スズキは川や港に多いのかまで見えてきます。

シーバス(スズキ)そのものの生態は、シーバスとは?生態・呼び名・魅力の完全ガイドで解説しています。本記事は、その中で少しだけ触れた「近い仲間」の話を深掘りした続編です。

  1. 結論|3種の違いはこの表で押さえる
  2. スズキの仲間は3種類だけ|「マルスズキ」は通称
    1. スズキ(マルスズキ)
    2. ヒラスズキ
    3. タイリクスズキ
  3. 見分け方|体の5か所をこの順に見る
    1. 1. 体高|ヒラスズキは胴が高い
    2. 2. 尾の付け根(尾柄)|ヒラスズキは太く短い
    3. 3. 尾びれ|ヒラスズキは切れ込みが浅い
    4. 4. 下あごの裏|ヒラスズキには鱗の列がある
    5. 5. 体側の黒点|タイリクスズキは大きな点が目立つ
    6. 現場での判断の順番
  4. 住む場所の違い|川のスズキ、磯のヒラスズキ
    1. スズキ|川・河口・内湾・港が中心
    2. ヒラスズキ|外海に面した磯と白い泡
    3. タイリクスズキ|河口と流れ込む川
  5. 体のつくりの違い|形が「食べ方」と「住む場所」を決める
  6. タイリクスズキと外来種の問題
    1. 養殖のいけすから逃げ出して広がった
    2. 何が心配されているのか
    3. 有明海の「特別なスズキ」
  7. 釣り人にとっての違い|狙い方・道具・安全
    1. ヒラスズキの磯は「慣れてから」が鉄則
    2. 迷った魚は写真で記録する
  8. 3種の違い|よくある質問
    1. Q1. 「マルスズキ」と「スズキ」は同じ魚ですか?
    2. Q2. ヒラスズキも川や港で釣れますか?
    3. Q3. 黒い点があればタイリクスズキですか?
    4. Q4. タイリクスズキは釣ってはいけない魚ですか?
    5. Q5. ヒラスズキとスズキ、どちらが大きくなりますか?
    6. Q6. 3種で味は違いますか?
  9. まとめ|3種の違いで覚えておく3か条
  10. 参考にした情報源

結論|3種の違いはこの表で押さえる

先に全体像を示します。細かい説明はこのあと順に行いますので、まずは表で「どこが違うのか」をつかんでください。

項目スズキ(マルスズキ)ヒラスズキタイリクスズキ
学名Lateolabrax japonicusLateolabrax latusLateolabrax maculatus(Lateolabrax sp.とする文献もある)
日本での立場在来種在来種(日本と韓国だけにいる東アジアの固有種)国外から養殖用に持ち込まれた外来の魚
主な分布北海道南部以南の日本沿岸茨城県〜九州の太平洋側、能登半島以南の日本海側、瀬戸内海など房総半島以西の本州・四国・九州の沿岸部に広がっている
よくいる場所川・河口・内湾・港外海に面した岩礁(磯)河口や流れ込む川。塩分の低い泥の多い場所を好むと考えられている
体形細長い体高が高い。尾の付け根が太く短い。尾びれの切れ込みが浅いスズキより体高がある
決め手になりやすい特徴ほかの2種の特徴がないこと下あごの裏に鱗の列がある体側の黒点が大きい(瞳ほどになることも)
3種の違いのまとめ。鹿児島大学総合研究博物館の報告、京都府外来生物データブックなどをもとに作成
3種を同じ長さにそろえて並べると違いが見えるスズキ(マルスズキ)細長い・尾の付け根が細いヒラスズキ体高が高い・尾の付け根が太く短いタイリクスズキ体側に大きな黒点が散らばる生成画像による模式的なイメージ。個体差があるので1つの特徴だけで決めつけない
体形だけでもかなり違いが出ます。ヒラスズキは「体高」と「尾の付け根」、タイリクスズキは「黒点」に注目します
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

ひと言でまとめると、ヒラスズキは「ずんぐりして尾が太い磯の魚」、タイリクスズキは「黒い斑点が目立つ外来の魚」です。そのどちらでもなければ、まずはスズキだと考えてよいでしょう。

スズキの仲間は3種類だけ|「マルスズキ」は通称

スズキ科(スズキ属)の魚は、東アジアの温帯の海にだけ暮らすグループです。鹿児島大学総合研究博物館などの報告によると、知られているのはスズキ、ヒラスズキ、タイリクスズキの3種です。世界中にたくさんいる魚ではなく、日本周辺の海に深く結びついた魚だといえます。

スズキ(マルスズキ)

標準和名(図鑑で使う正式な日本語の名前)は「スズキ」です。釣り人はヒラスズキと区別するために「マルスズキ」「マル」と呼びます。マルという名前は、ヒラスズキの平たく高い体に比べて、断面が丸く見えることから来た呼び名と言われています。セイゴ・フッコ・スズキと名前が変わる出世魚はこの魚のことです。

サイズによる呼び名の違いは、シーバスのサイズと呼び名|セイゴ・フッコ・スズキで詳しくまとめています。

ヒラスズキ

ヒラスズキは1957年に新種として記載された魚です。日本と韓国の南部・済州島にだけいる、東アジアの固有種です。釣り人の間では「ヒラ」と呼ばれ、荒れた磯で白い泡の中から飛び出してくる姿が、多くのアングラーを夢中にさせています。

タイリクスズキ

タイリクスズキは、中国や台湾の沿岸などにもともと住む魚です。京都府の外来生物データブックによると、黄海・渤海・東シナ海・南シナ海の沿岸などが原産地です。スズキより早く大きく育つため、養殖用に日本へ持ち込まれました。体の黒点から「ホシスズキ」と呼ばれることもあります。

学名については研究者の間でも整理が続いています。京都府の資料ではLateolabrax maculatus、鹿児島大学の報告ではLateolabrax sp.(種名を確定させない書き方)としています。釣り人として知っておくなら「スズキとは別の種類で、もとは日本にいなかった魚」という理解で十分です。

見分け方|体の5か所をこの順に見る

研究者がヒラスズキを確かめるときは、ひれの筋(軟条)の数、鱗の並び、体の各部の長さなどを細かく調べます。鹿児島大学総合研究博物館の報告でも、背びれや尻びれの軟条の数、下あごの鱗の列、尾の付け根の形、尾びれの切れ込みなどを照らし合わせて種を決めています。

釣り場でひれの筋を数えるのは現実的ではありません。そこで、目で見て分かりやすい5か所に絞って確認します。

見分けるときに見る5つの場所1体高胴の高さと全長の比2尾の付け根太さと長さ3尾びれ切れ込みの深さ4下あごの裏鱗の列があるか5体側の黒点大きさと位置
見るのはこの5か所。1〜3は形、4は鱗、5は模様です。ひとつだけで決めず、組み合わせて判断します
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

1. 体高|ヒラスズキは胴が高い

体高とは、背中からおなかまでの高さのことです。ヒラスズキは体高が高く、横から見ると「幅広の板」のような印象があります。スズキは同じ長さでも胴が細く、すらっとして見えます。タイリクスズキはその中間で、スズキよりは体高があるとされています。

ただし、体高は太り具合でも変わります。よく餌を食べた秋のスズキは、思った以上に体高が出ることがあります。体高だけで決めず、次の尾の付け根とセットで見てください。

2. 尾の付け根(尾柄)|ヒラスズキは太く短い

尾の付け根の細くくびれた部分を「尾柄(びへい)」と呼びます。ヒラスズキの尾柄は太くて短いのが特徴です。鹿児島大学の報告でも、ヒラスズキを決める特徴のひとつとして「尾柄が太く短い」が挙げられています。手で握ったとき、スズキよりがっしりした感触があります。

3. 尾びれ|ヒラスズキは切れ込みが浅い

尾びれの後ろの縁を見てください。スズキは真ん中がはっきりへこんでいます。ヒラスズキはへこみ(湾入)が浅く、まっすぐに近い形をしています。尾びれは閉じていると分かりにくいので、軽く広げて見るのがコツです。

4. 下あごの裏|ヒラスズキには鱗の列がある

もっとも頼りになるのがここです。ヒラスズキの下あごの裏側には、鱗が列になって並んでいます。鹿児島県喜界島で採れた標本の報告では、下あごの腹側に2列の鱗の列があったと記録されています。秋田県立博物館の報告でも、ヒラスズキに必ず見られる特徴として下あごの鱗の列が使われています。

ただし、同じ秋田県立博物館の報告には、下あごの鱗の列はスズキやタイリクスズキでもまれに見られるという注記もあります。「鱗の列がある=100%ヒラスズキ」ではありません。体高・尾柄・尾びれの特徴とあわせて確認しましょう。

5. 体側の黒点|タイリクスズキは大きな点が目立つ

タイリクスズキを見分ける手がかりは黒い斑点です。京都府の外来生物データブックでは、幼魚や若い魚の体側の黒点が大きいことを特徴としています。その大きさは、ときに瞳の大きさに迫るほどだと書かれています。

ここで注意したいのは、スズキの若い魚にも小さな黒い点が出ることがある点です。見るべきは「点があるか」ではなく「点がどれくらい大きく、どこに並んでいるか」です。釣り情報メディアのTSURI HACKでも、側線(体の横を走る感覚器の線)より下に黒い斑点があるかどうかが一般的な目安とされつつ、黒点だけでは確実に見分けられないと説明されています。

現場での判断の順番

5か所を見る順番は、次のフローチャートのとおりです。形で大きく分けてから、鱗と模様で確かめる流れにすると迷いにくくなります。

釣れた1匹を見分ける順番(現場用)① 体高が高く、尾の付け根が太く短い?尾びれの切れ込みが浅い?はい② 下あごの裏に鱗の列がある?いいえはいヒラスズキの可能性大いいえ形を見直す写真を残して判断保留③ 側線より下に大きな黒点が並ぶ?はいタイリクスズキ(または交雑個体)の疑いいいえスズキ(マルスズキ)黒点は小さい点ならスズキの若魚にも出る。大きさ(瞳に迫るか)で見る
形(体高・尾柄・尾びれ)→下あごの鱗→黒点の順に見ると、多くの場合は見当がつきます。迷ったら写真を残して保留にします
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

スズキとタイリクスズキを確実に分けるのは、実は専門家でも簡単ではありません。研究では、側線の穴のあいた鱗の数、えらの内側にある突起(鰓耙)の数、背骨の数などを組み合わせて判断する方法が使われています。見た目だけで断定せず、「タイリクスズキの疑い」くらいにとどめておくのが誠実な姿勢です。

住む場所の違い|川のスズキ、磯のヒラスズキ

3種は、よくいる場所もはっきり違います。釣り人にとっては、見分け方以上に大切な違いかもしれません。どこに立つかで、出会える魚が変わるからです。

3種がよくいる場所|川から外洋の磯まで川・河口港・内湾砂浜外洋の磯スズキ:川・河口・内湾・港が中心ヒラスズキ:外海に面した岩礁タイリクスズキ:河口・流入河川ヒラスズキが川に入る例もある生成画像による風景のイメージ。実在の釣り場ではありません
スズキは川から港までの穏やかな水域、ヒラスズキは外海の磯、タイリクスズキは河口や流れ込む川に多いとされています
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

スズキ|川・河口・内湾・港が中心

スズキは海の魚ですが、川をさかのぼって淡水域まで入ることでも知られています。内湾の港、河口の汽水域(海水と川の水が混ざる場所)、都市の運河など、比較的波の穏やかな場所でよく釣れます。私たちが「シーバス釣り」と聞いて思い浮かべる釣り場の多くは、このスズキの住みかです。

川での狙い方は河川のシーバス攻略|流れとストラクチャーの読み方、港の明かりまわりは常夜灯攻略|明暗の境目という一級ポイントで解説しています。

マルスズキが使う7つのフィールドの全体像は「シーバスはどこにいる?7つのフィールド徹底解説」にまとめています。

ヒラスズキ|外海に面した磯と白い泡

ヒラスズキは外海に面した岩礁域を主な住みかにしています。波が岩に砕けてできる白い泡のかたまり「サラシ」の下が、ヒラスズキの代表的な狩り場です。泡で上から見えにくく、流れで小魚が弱るため、待ち伏せにぴったりの場所なのです。

分布は、鹿児島大学総合研究博物館の報告によると、茨城県から九州南部にかけての太平洋沿岸、能登半島から薩摩半島にかけての日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、鹿児島湾などです。2013年には秋田県男鹿市の磯でも釣れた記録があり、珍しい北の記録として報告されています。また、ヒラスズキが川の淡水域に現れることも知られています。

タイリクスズキ|河口と流れ込む川

京都府の外来生物データブックによると、タイリクスズキは海で産卵し、稚魚や若い魚は汽水域や淡水域にも入ります。スズキより塩分の低い、泥の多い環境を好むと考えられています。高知県の浦戸湾ではスズキが、湾に流れ込む川ではタイリクスズキが多くなる傾向があるという報告も紹介されています。

つまり、河口や川でシーバスを釣る人ほど、タイリクスズキに出会う可能性があるということです。黒点の大きな魚が釣れたら、写真を残しておくと記録として役に立ちます。

体のつくりの違い|形が「食べ方」と「住む場所」を決める

なぜヒラスズキは荒れた磯にいて、スズキは穏やかな川や湾にいるのでしょうか。この疑問に、体の形から答えた研究があります。長崎大学の河端雄毅准教授(当時)らが、ヒラスズキとスズキの形や泳ぎ、捕食の様子を比べた研究です。

体の形が「食べ方」と「住む場所」を決めているスズキ=泳ぎ回って探す型ヒラスズキ=待って吸い込む型・巡航(泳ぎ続ける)に向く体形・探すための遊泳量が大きい・流れの穏やかな川・内湾で捕食・小回り(操作性)に向く体形・口を開く速さ・吸い込む力が強い・流れが強く複雑な磯で捕食長崎大学・河端雄毅准教授(当時)らの研究成果報告(住友財団助成)をもとに作図ヒラスズキは夜間に磯などの浅い場所で捕食していたことも記録されている魚は生成画像によるイメージ
スズキは泳ぎ続けて餌を探す体、ヒラスズキは小回りと吸い込む力に優れた体。形の違いが住む場所の違いにつながっています
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

住友財団への研究成果報告によると、体形の解析では、スズキは長く泳ぎ続ける「巡航」に向いた形でした。一方、ヒラスズキは小回りの利く「操作性」に優れた形でした。さらに、高速度カメラで捕食の瞬間を撮影すると、口を開く速さや吸い込む距離など、吸い込む力に関わる能力はヒラスズキのほうが高かったと報告されています。

大きな水槽で比べると、攻撃したときの捕食成功率はヒラスズキが高く、餌を探して泳ぐ量はスズキが多い傾向でした。研究では、こうした違いから次のように予測しています。

  • ヒラスズキ:狙った獲物を確実に吸い込めるが、泳ぎ回って探すのは苦手。だから流れが強く複雑な磯で、餌が流されてくるのを待って食べる
  • スズキ:一撃の力はヒラスズキに及ばないが、泳ぎ続けるのが得意。だから流れの穏やかな川や内湾を回遊しながら餌を探す

ヒラスズキに水温・水深の記録計をつけて放流した調査では、夜に磯などの浅い場所で捕食していたことも分かっています。白いサラシの中で小魚を一瞬で吸い込む。あの太い尾柄と高い体は、そのためのつくりだと考えると、釣り場の景色が少し違って見えてきます。

上級者が磯でヒラスズキを狙うとき、「サラシの切れ目」や「払い出しの脇」にルアーを流し込むのは、この捕食スタイルに合わせているからです。泳ぎ回って追ってくる魚ではないので、居場所の目の前にルアーを届ける精度が釣果を分けます。逆にスズキは、潮が動いてベイト(餌の小魚)が動けば、自分から回ってきてくれます。

スズキが回ってくるタイミングの読み方は、シーバスの潮の読み方|大潮小潮・上げ下げとタイドグラフ活用を参考にしてください。

タイリクスズキと外来種の問題

養殖のいけすから逃げ出して広がった

京都府の外来生物データブックによると、タイリクスズキは1989年ごろに海面養殖用として導入されました。台風などで網いけすから逃げ出した魚が、各地の海に広がったと考えられています。当初は瀬戸内海や紀伊半島の南端から報告されていましたが、今では房総半島以西の本州・四国・九州の沿岸部に広がっているとされています。京都府内でも舞鶴・宮津・久美浜で採集されています。

愛媛県の資料では、養殖用に輸入された魚が逃げ出し、宇和海の河口域を中心に定着していると書かれています。京都府の資料には、愛媛県宇和島市の来村川河口域では、すでにタイリクスズキに置き換わっているという記述もあります。

何が心配されているのか

心配されているのは、主に次の2つです。

  1. 住む場所の奪い合い:スズキと同じような暮らし方をするため、在来のスズキと場所や餌を取り合う
  2. 交雑(雑種ができること):スズキとの間に生まれたと思われる個体が各地で採れており、スズキの遺伝子が乱れることが心配されている

京都府では「準被害危惧種」、愛媛県でも在来の生態系に影響を及ぼすおそれのある外来種として扱われています。かつて環境省の「要注意外来生物リスト」にも載っていました(このリストは2015年に新しいリストへ移行して廃止)。一方で、外来生物法の「特定外来生物」には指定されていません。法律で持ち帰りや再放流が一律に決められている魚ではない、ということです。扱いは地域のルールや漁協の案内を確認してください。

有明海の「特別なスズキ」

少し話がややこしいのが有明海です。有明海には、スズキとタイリクスズキの中間的な特徴をもつ、昔からの天然の集団がいます。日本魚類学会の英文誌Ichthyological Researchに掲載された研究の和文要旨では、有明海のスズキは「雑種起源個体群」と表現されています。最近の養殖魚の逃げ出しとは別の、ずっと昔の交雑に由来すると考えられている集団です。

京都府の資料によると、この有明海の集団は環境省のレッドリスト(2013年)で、絶滅のおそれのある地域個体群に位置づけられています。黒点の目立つスズキが有明海で釣れても、それは外来魚ではなく、守るべき地元の魚かもしれません。「黒点があるから外来種」と決めつけないことが大切です。

釣り人にとっての違い|狙い方・道具・安全

同じ「シーバス」でも、スズキとヒラスズキでは釣りの中身がかなり変わります。タイリクスズキは、狙って釣るというより、スズキ狙いの中で混じる魚と考えてよいでしょう。

項目スズキ狙いヒラスズキ狙い
主な釣り場港・河川・河口・干潟など外海に面した磯
狙う条件潮が動く時間、ベイトが集まる場所、常夜灯の明暗波が岩に当たってサラシができる日
ルアーの届け方流れに乗せて広く探すサラシの中や切れ目へ正確に流し込む
道具の考え方標準的なシーバスタックルで始められる波と岩をかわすため、長く強めのロッドを選ぶことが多い
安全面夜の足元、増水時の川に注意高波・滑る岩。装備と判断の比重が大きい
スズキとヒラスズキの釣りの違い。ヒラスズキは「釣れる日」と「危ない日」が近いのが特徴です

最初の1本をどの釣り場で狙うかと、そろえる道具については、シーバス釣りの始め方|最初に揃える道具と予算でまとめています。初めての人は、スズキが狙える港や河口から始めるのがおすすめです。

ヒラスズキの磯は「慣れてから」が鉄則

ヒラスズキがよく釣れるのは、波が岩に当たって白いサラシが広がる日です。それは同時に、足元に波が這い上がってくる危ない日でもあります。磯に立つなら、ライフジャケットと磯用のスパイクシューズは必須です。単独での釣行は避け、波が高い日や予報が悪化する日は釣りに行かない判断をしてください。

このブログの管理人は、磯でヒラスズキも狙うロックショアの釣りもしています。磯でのヒラスズキの狙い方は、姉妹サイトのROCK SHORE BASE「ヒラスズキの狙い方完全ガイド|サラシ攻略・ルアー・タックル・安全まで」で詳しく解説しています。釣れるサラシと危ないサラシの見分け方は、同じく「釣れるサラシ・危険なサラシ|厚さ・伸び・払い出しを見分ける」が参考になります。

迷った魚は写真で記録する

釣った魚の種類に迷ったら、写真を残しておきましょう。下の4カットがあれば、あとから図鑑や詳しい人に確かめてもらえます。特に珍しい地域でのヒラスズキや、黒点の大きな魚は、博物館や研究機関にとっても貴重な記録になることがあります。

迷ったら撮っておく4カット1 全身を真横からメジャーと一緒に2 下あごの裏鱗の列が写る角度で3 尾の付け根と尾びれ広げて切れ込みを見せる4 体側の黒点側線の下側も入れる写真があれば、あとから詳しい人や資料で確かめられる(図は生成画像によるイメージ)
全身・下あごの裏・尾・黒点の4カットを撮っておけば、あとから見分けられます。リリースする魚は手早く撮影しましょう
※魚・風景は生成AIで作成したイメージ画像です。実物の写真ではありません。

撮影は、魚を濡れた手で扱い、短い時間で済ませます。リリースする場合は、水から出している時間をできるだけ短くしてください。地面の熱い石や乾いた砂の上に魚を置かないことも大切です。

3種の違い|よくある質問

Q1. 「マルスズキ」と「スズキ」は同じ魚ですか?

同じ魚です。図鑑で使う正式な名前はスズキで、マルスズキは釣り人がヒラスズキと区別するための通称です。この記事でも、特に断らない限り「スズキ」はマルスズキのことを指しています。

Q2. ヒラスズキも川や港で釣れますか?

主な住みかは外海に面した磯ですが、川の淡水域に現れることも知られています。外海に近い港や河口なら、ヒラスズキが混じる可能性はあります。ただ、狙って数を釣るなら磯が中心になります。

Q3. 黒い点があればタイリクスズキですか?

そうとは限りません。スズキの若い魚にも小さな黒点が出ることがあります。タイリクスズキの黒点は大きく、ときに瞳ほどになるのが特徴です。また、有明海のように中間的な特徴をもつ天然の集団もいます。黒点だけで決めず、「疑い」として記録するのが確実です。

Q4. タイリクスズキは釣ってはいけない魚ですか?

外来生物法の特定外来生物には指定されていないため、釣ること自体が法律で禁じられている魚ではありません。ただ、地域によって扱いの考え方は異なります。持ち帰るかどうかは、地域のルールや漁協の案内を確認してから判断してください。生きたまま別の場所に運んで放すことは、絶対にしないでください。

Q5. ヒラスズキとスズキ、どちらが大きくなりますか?

どちらも大型になる魚で、釣りの世界ではどちらも80cmを超える個体が話題になります。ただ、種ごとの最大サイズを公的に比べた資料は見つけられませんでした。サイズの目安と年齢の関係は、スズキについてはシーバスのサイズと呼び名でまとめています。

Q6. 3種で味は違いますか?

味は、種類よりも、釣れた場所や季節、締め方や持ち帰り方の影響が大きいと考えてください。外海の磯で釣れた魚と、水のよどんだ場所で釣れた魚とでは、同じ種類でも印象が変わることがあります。食べる場合は、釣れた水域の水質と、持ち帰りまでの温度管理に気をつけましょう。

まとめ|3種の違いで覚えておく3か条

  1. 形で分けて、鱗と模様で確かめる:体高が高く尾の付け根が太短ければヒラスズキの候補。下あごの裏の鱗の列で確かめる。大きな黒点はタイリクスズキの手がかり
  2. 住む場所が違う:スズキは川・河口・港、ヒラスズキは外海の磯、タイリクスズキは河口や流れ込む川に多い。体の形がそのまま食べ方と住む場所を決めている
  3. 決めつけず、写真で残す:見た目の特徴には例外がある。有明海のように守るべき天然の集団もいる。迷ったら4カットを撮って記録する

次に釣れた1匹は、リリースする前に少しだけ観察してみてください。尾の付け根の太さ、尾びれの形、下あごの裏。たったそれだけで、その魚が川を回遊してきたスズキなのか、白い泡の中で待ち伏せていたヒラスズキなのかが見えてきます。魚の違いが分かると、次に立つ釣り場の選び方まで変わってきます。さあ、今度の週末はどちらに会いに行きましょうか。

このほか、瀬戸内の釣り場は香川・瀬戸内のシーバスポイント10選で紹介しています。

季節によって居場所がどう変わるかは、シーバスの年間シーズナルパターン総まとめ|春夏秋冬の居場所・餌・狙い方にまとめています。

参考にした情報源

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